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公正証書遺言が錯誤により無効とされた例

2017年11月24日

さいたま地裁熊谷支部平成27年3月23日判決

 遺言は公正証書で作っておいた方が形式的な間違いを防ぐことができるので,自筆証書遺言よりも安心ですが,公正証書で作成された遺言であっても無効になる場合があります。このケースでは錯誤無効であるとされました。

 遺言者はAが経営する養護盲老人ホームB園に入所していました。

遺言者が作成した遺言には

 第1条に,遺言者の葬儀費用並びに〇〇寺への納骨埋葬費用を除いた残りの遺言者所有の遺産全部を包括して、B園に遺贈する。とある他,

 付言事項として, 遺言者(全盲)の長男(精神障害あり)と長女(精神遅滞あり)が,施設の生活や入院生活等でお金を必要とする場合及び両人が死亡した際の葬儀並びに〇〇寺への納骨埋葬費用を,私の寄付金から支出していただくようB園園長にお願いする。 と書かれていました。

遺言が無効になる要件

 平成27年3月23日さいたま地裁熊谷支部は,遺言が錯誤無効になる要件として次の様に判示しました。

 「遺言は,遺言者の最終的な意思表示であり,しかも死後においては自らその内容,動機等を説明することができないのであるから,錯誤の認定は慎重になされることが必要であるところ,錯誤により遺言が無効とされる場合とは,当該遺言における遺言者の真意が確定さた上で,それについて遺言者に錯誤が存するとともに,遺言者が遺言の内容となった事実についての真実を知っていたならば,かかる遺言をしなかったといえることが必要である。」

 ※ここまでは法律論で一般的な話です。

この事件の事実の判断

裁判所は次にこの事件の事実に関する判断をしました。

 遺言者は,長男と長女が施設の生活や入院生活等で金銭を必要とする場合には,遺言者の所有金から支出してもらいたい,遺言者,長男,長女が死亡した場合には,その葬儀並びに〇〇寺への納骨埋葬を執り行ってもらい,所有金に残額がある場合は,その残額をB園に寄付することを実現するために遺言を作成する意思を有していた。 全盲になってしまった遺言者や精神遅滞や精神障害のある長男と長女の生活や経済状態を心配していたことや夫も死亡したことなどから,この遺言者の心情は相当強く,変わるということも考えがたい。

 しかるに,本件遺言ではB園が長男や長女の生活費や入院生活費を支出することが法的義務とはされていない点や,遺言者や長男,長女が死亡し葬儀費用等を執り行い残った金銭がある場合にB園に遺贈するものではないという点において,遺言者の意思とは異なっている。遺言者は,B園が長男,長女に生活費を支払う義務がないと認識していれば本件遺言をしなかったと認められる。遺言者は本件遺言時に錯誤に陥っていたと認められる。

 ※ 裁判所は遺言者の子供たちの行く末を心配する心情を理解してこのように判断したのでしょう。

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