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遺言者より先に遺言を受けるはずだった相続人が死亡した場合

2017年12月2日

遺言で子供の一人に遺産を残したのに,遺言者よりも先にその子供が死んでしまった場合,その遺言は無効になるのか?それとも,その子供のさらに子供が遺産を受けることができるのでしょうか?この問題については最高裁の判例があります。

最高裁平成23年2月22日判例

(事案)

 両親と長女,長男の4人家族で,まず父が亡くなりましたが遺産分割協議はされなかったので,父が所有していた不動産は母が2分の1,長女,長男がそれぞれ4分の1ずつ法定相続分として取得した状態でした。ここまでが前提です。

 母は,長男に全財産を相続させる遺言を作成しました。その後、先に長男が亡くなってしまい,ついで母が亡くなりました。 長女は,母の遺言が失効したとして,長男の子に対して,遺産である不動産について長女が2分の1の共有持分を有することの確認を求める訴訟を提起しました。

 (第一審判決)

 一審の東京地裁は,相続させる旨の遺言において遺産を承継するとされた相続人が遺言者よりも先に死亡した場合は,原則として代襲相続の規定が準用され,この事件では母の遺産は長男の子らが代襲相続すると判決しました。しかし,これは高裁で逆転されます。

 (東京高裁判決)

 東京高裁は次のように判断しました。 遺言は遺言者の死亡のときから効力を生ずるのであるから(民法985条1項),遺言者の死亡時に受遺者または遺言により財産を承継するとされた者が存在することが必要であるのは当然であり,遺言者が相続分の指定または遺産分割方法の指定をしていても,その対象となった相続人が遺言者の死亡以前に死亡していた場合には,その遺言はその効力を生じない。

 もっとも,遺言の効力発生時点において遺言による指定に係る相続人が既に死亡している場合,当該遺言の趣旨として、その場合には当該相続人の代襲相続人にその効力を及ぼす旨を定めていると読み得るものもあり得るところであるが,これはあくまで遺言の解釈問題である。

 そして,遺言が相続分又は遺産分割方法の指定をするものであるからといって,それだけで直ちに,当該遺言には遺言者の死亡以前に指定に係る相続人が死亡した場合にはその代襲相続人にその効力を及ぼす趣旨が含まれていると解するのは相当でない。

 民法994条1項は,受遺者が遺言者の死亡以前に死亡したときの遺贈の解釈(通常、遺言者の意思は,特定の受遺者に向けられていると解する。)を示したものともとらえられるところ,この遺贈の場合と同様、相続分又は遺産分割方法の指定をする遺言であっても,通常,遺言者は特定の相続人に着目していると考えられるからである。

 そして,遺言者が,自分の死亡以前に指定に係る相続人が死亡した場合にその代襲相続人にも遺言の効力を及ぼそうと考えるなら,当該遺言において,遺言者の死亡以前に指定に係る相続人が死亡したときは代襲相続人となるべき者に相続させる旨を補充的に記載しておくことで,その趣旨を明らかにすることができるのである(そのような遺言の例が公証実務においてまま見られることは公知の事実である。)。

 また,遺言者は、指定に係る相続人が死亡した後,新たに遺言をすることも可能であり,それにより容易に目的を達することもできるのである。

 これを本件についてみると,本件遺言書の記載からは,遺言者である花子の死亡以前に夏夫が死亡した場合にはその代襲相続人である被控訴人松男,被控訴人梅彦及び被控訴人竹子にその効力を及ぼすこととするという趣旨を読み取ることはできず,その他その趣旨をうかがわせるに足りる証拠はない。

 ※ 高裁はとても説得力ある論理で一審判決を覆しました。最高裁も高裁の判断を認めました。

 (最高裁)

 被相続人の遺産の承継に関する遺言をする者は,一般に,各推定相続人との関係においては,その者と各推定相続人との身分関係及び生活関係,各推定相続人の現在及び将来の生活状況及び資産その他の経済力,特定の不動産その他の遺産についての特定の推定相続人の関わりあいの有無,程度等諸般の事情を考慮して遺言をするものである。 このことは,遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定し,当該遺産が遺言者の死亡の時に直ちに相続により当該推定相続人に承継される効力を有する「相続させる」旨の遺言がされる場合であっても異なるものではなく, このような「相続させる」旨の遺言をした遺言者は,通常,遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される。

 したがって,上記のような「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはないと解するのが相当である。

 ※ ここまでが法律論でここから先はこの事件への当てはめです。

 前記事実関係によれば,BはAの死亡以前に死亡したものであり,本件遺言書には,Aの遺産全部をBに相続させる旨を記載した条項及び遺言執行者の指定に係る条項のわずか2か条しかなく,BがAの死亡以前に死亡した場合にBが承継すべきであった遺産をB以外の者に承継させる意思を推知させる条項はない上,本件遺言書作成当時,Aが上記の場合に遺産を承継する者についての考慮をしていなかったことは所論も前提としているところであるから,上記特段の事情があるとはいえず,本件遺言は,その効力を生ずることはないというべきである。

 ※ この判例があるので,もし遺産を残す相続人が先に死んだ場合にはその子に遺産を残したいと思うときは,その旨を遺言書の中で明示しておく必要があります。 

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