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生命保険と特別受益の一例

2023年4月2日

生命保険は相続で特別受益の対象になる

  
事案


被相続人である夫が生命保険(定期保険特約付終身保険2000万円およびがん保険100万円)を契約しました。被保険者は被相続人(夫)で、保険金の受取人は妻となっていました。
夫が亡くなり、妻はこの保険金合計2100万円を受け取りました。
生命保険ではない相続財産は預貯金合計で約460万円でした(それ以外にも財産があったのではないかという争いがありました。)。
被相続人の母親が、妻が受け取った生命保険金合計2100万円を、民法903条の類推適用により、特別受益に準じて持ち戻すべきだと、遺産分割審判事件において主張しました。


生命保険と相続の関係


原則として、相続人の一人が受取人として指定された生命保険は遺産とは無関係です。ですから遺産分割の話し合いとは無関係に指定された保険金受取人が生命保険を受け取ることができるのが原則です。
しかし、原則には例外があるもので、平成16年10月29日最高裁判例により、保険金の額、保険金額の遺産総額に対する比率、保険金受取人や他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態などの事情を総合考慮して、生命保険受取人とその他の相続人間との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし、到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が損する場合には、
民法903条の類推適用により、特別受益に準じて持ち戻しの対象となります。要するにいろいろな要素を考慮したうえで、是認することができないほどの著しい不公平があるかどうかが問題になります。


裁判所の結論


裁判所は、家裁も高裁もこの事件において、生命保険金を特別受益として持ち戻すことを否定しました。その結果、生命保険は生命保険として保険金受取人である妻がそのままが受け取り、その他の遺産は相続人間で遺産分割をして分けることになります。
裁判所が生命保険金を特別受益として持ち戻すことを否定した理由は(これは上に書いた最高裁判例にしたがって判断していますので対比して見てください。)
1 死亡保険金の額が一般的な夫婦における夫を被保険者とする生命保険金の額と比較してさほど高額なものとはいえない。
2 被相続人と妻は婚姻期間約20年、婚姻前を含めた同居期間約30年の夫婦である。
その間、妻は一貫して専業主婦で、子がなく、被相続人の収入以外に収入を得る手段を得ていなかった。
3 死亡保険金の大部分をしめる定期保険特約付終身保険は、妻との婚姻を機に死亡保険金の受取人が妻に変更されるとともに死亡保険金の金額を減額変更し、被相続人の手取り月額20万円ないし40万円の給与収入から保険料として過大でない額を毎月払い込んでいたこと。
これらの事情から、裁判所は
本件の保険金は、被相続人の死後、妻の生活を保障する趣旨のものであったと認められるところ、妻は現在54歳の借家住まいであり、本件死亡保険金により生活を保障すべき期間が相当長期間にわたることが見込まれる。
これに対し、被相続人の母親は、被相続人と長年別居し、生計を別にする母親であり、被相続人の父親(つまり夫)の遺産であった不動産に長女および二女と共にくらしていることなどの事情を併せ考慮すると、本件において、特段の事情が存するとは認められない。と判断しました。
平成16年の最高裁判例の基準を当てはめた一例です。

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