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相続人不在のときの特別縁故者への財産分与を認めた例

2021年2月27日

大阪高裁平成31年2月15日決定

 

亡くなった人に相続人がいない場合、相続財産管理人を選任して相続人の捜索などをしますが、最終的に相続人としての権利を主張する者がない場合、亡くなった方と一定の関係にあった人は相続財産の一部または全部を受け取ることができる場合があります。
民法第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)の条文は次のとおり。
前条の場合(相続人捜索の公告期間内に相続人としての権利を主張する者がなかった場合)において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部または一部を与えることができる。
前項の請求は、第958の期間の満了後三カ月以内にしなければならない。
身寄りのない方を長い間世話していたときなどにこの条文が利用されます。
このケースでは亡くなった方を長年に渡って雇用し面倒をみてきたことを重視するかどうかで家裁と高裁で判断が分かれました。相続財産は4000万円以上でしたが家裁は800万円だけ認めたので特別縁故者が抗告し、それに対し高裁は2000万円を認めました。

 

大阪高裁決定の要旨


大阪高裁は次のように判断しました。一部を変更しています。
被相続人は、4歳のときに父と死別してから母の下で地域住民の支援を受けて成育した。被相続人は知的能力が十分ではなかったため、抗告人(特別縁故者)の父に雇用されたが、47歳までには親族と死に別れ独居生活となった。
抗告人は父から家業をついだが、被相続人の生活を慮って、被相続人が70歳になるまでの約28年間、家業引き継ぎ前と同様、被相続人の雇用を続けた。被相続人は知的能力が十分でなかったが、抗告人は被相続人が高齢になるまで同人の稼働能力に見合う以上の給料を支給し続けた。
このような被相続人の稼働能力と抗告人による被相続人の雇用の実態に照らすならば、抗告人から被相続人に給料名目で支給された金額には、被相続人の労働に対する対価にとどまらず、それを超えた抗告人による好意的な援助の部分が少なからず含まれていたとみることができる。そのうえ、抗告人は、上記期間、被相続人に食事や風呂を提供するなどして同人の生活も支えてきた。
また、被相続人は解雇直後の脳梗塞の発症後、入院治療を経て施設に入所した。抗告人はその際の諸手続きを行い、その後の見舞い、外出時の付き添い及び施設への対応を続けた他、被相続人の財産を管理し、被相続人の自宅の取り壊しと跡地の有効利用(賃貸)に奔走した。そして、被相続人が死亡するまでの約16年間、上記の財産管理等の状況を精緻に記録し被相続人に説明した。
被相続人も生活全般や財産管理を抗告人に任せ、任意後見受任者を抗告人とするなど抗告人を頼りにしていた。
さらに抗告人は被相続人が死亡すると、被相続人の四十九日の法要を執り行い、相続財産管理人選任の申立をし、同管理人の業務に協力した。
以上の検討を踏まえると、被相続人が4000万円以上もの相続財産を形成し、これを維持できたのは、抗告人によって約28年間、被相続人の稼働能力を超えた経済的援助と、約16年間、緻密な財産管理が続けられたからとみるのが相当である。被相続人の相続財産の中には、抗告人による約44年間もの長年にわたる経済的援助等によって形成された部分が少なからず含まれているというべきである。このほか、抗告人は生活面でも被相続人を献身的に支え、同人死亡後はその法要等を執り行った。
このように、被相続人の相続財産の相応の部分が抗告人による経済的援助を原資としていることに加え、被相続人の死亡前後を通じての抗告人の貢献の期間、程度に照らすならば、抗告人は親兄弟にも匹敵するほどに、被相続人を経済的に支えた上、
同人の安定した生活と死後縁故に尽くしたということができる。
したがって、抗告人は、被相続人の療養看護に努め、被相続人と特別の縁故があった者に該当するというべきである。
そして、抗告人自身と被相続人との縁故の期間(被相続人42歳から86歳)や程度のほか、相続財産の形成過程や金額など一件記録にあらわれた一切の事情を考慮すれば、
被相続人の相続財産から抗告人に分与すべき額について、2000万円とするのが相当である。


解説


家裁は、雇用していたから給料を払っただけなので特別の寄与ではないと簡単に切り捨てましたが、高裁決定を読むと家裁の裁判官は実情を何も見ない裁判官だったということです。
相続人がいないときの特別縁故は、何の血縁もないけれどずっと世話をしてきた人に報いるための制度です。もし要件に当てはまるときは試みる価値があります。+

 

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