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相続分譲渡と遺留分侵害

2020年6月30日

相続分の譲渡が問題になった事件を紹介します。

 

東京高裁平成29年7月6日判決(判例時報2370号)

事案

平成元年、父が死亡しました。相続人は母(父の妻)と子ども3人(X、A、Y)で、相続分は母が1/2、子どもらは各1/6でした。
平成5年、母は父の相続における相続分をYに無償譲渡しました。Aも相続分1/6をYに無償譲渡しました。その結果、父の相続についての相続分は、Xは1/6、Yは5/6となりました。
亡父の遺産分割について遺産分割審判が行われ、その結果、X、A、Yらはそれぞれ遺産を取得し、XがYに対し土地を取得した代償金として約1196万円を払うことなどが決められました。
平成25年、母が死亡しました。相続人は子ども3人(X、A、Y)です。しかし、母に固有の遺産はありませんでした。
XとAはYに対し、「母が父の相続のときに、母の法定相続分をYに譲渡したことが遺留分減殺の対象となる贈与にあたる。」と主張して遺留分減殺請求をしました。

裁判所の結論

裁判所は一審(甲府地裁都留支部)も高裁もこのケースでは、法定相続分の無償譲渡遺留分侵害になると認めました。つまり「相続分の譲渡」は遺留分減殺のとなる「贈与」に当たるということです。もちろんこの「贈与」が遺留分減殺の対象としての要件も備えなければいけません。
判決の核心部分は次のとおりです。
(高裁)
「被相続人母から控訴人に対する相続分の譲渡によって、積極財産と消極財産を包括した遺産全体に対する譲受人(被相続人母)の割合的な持分が譲受人(控訴人)に移転し、控訴人は、これによって増加した相続分を前提に遺産分割を請求し、参加できることとなったのであるから、相続分の譲渡は財産的価値を有し、民法549条(贈与の条文)所定の財産に該当するといえる。
そして、本件相続分譲渡は無償でされたから、これは同条の贈与に該当すると認められる。
また、本件相続分譲渡の目的は、総額9057万1787円の亡父の遺産の2分の1にあたる持分であるから、相当高額な贈与であって民法903条(特別受益の条文)所定の生計の資本としての贈与に該当する。
 以上によれば、本件相続分譲渡は、生計の資本としての贈与として特別受益(903条)に該当し、民法1044条(遺留分の準用条文)により遺留分減殺の対象となる贈与と認められる。」
・・・
高裁は具体的な当てはめとして次のように認定しました。
「亡父の相続における控訴人の相続分5/6のうち、被相続人母から譲渡された相続分は3/6であるから、控訴人の取得した亡父の財産のうち3/5が被相続人母から譲渡された部分である。
控訴人は、本件相続分譲渡後の控訴人の包括的割合的持分5/6に対応するものとして遺産分割により原判決別紙記載の亡父の財産を具体的権利として取得したところ、被控訴人らは、その3/5に被控訴人らの遺留分各1/6を乗じた各1/10を遺留分減殺によりすることとなる。
 したがって、原判決別紙遺産目録記載の各財産のうち不動産については、各1/10ずつの共有持分が被控訴人らに帰属することになるとともに、預貯金、処分済の各株式の評価額及び代償金の合計額である3898万2978円の1/10である389万8297円ずつについて、控訴人が被控訴人らに支払うべきである。」
(解説)

相続で取得した具体的な財産をもらうというのは良くあることですが、このケースでは具体的な財産は何も動いていません。父の遺産分割のときの「相続分の譲渡」が問題となり、他に財産が無かったので遺留分侵害になったということです。実際にはこのケースでも父の死から母の死まで約25年経過していますが、25年前の相続のときの証拠が残っているか?この点の証拠集めが大きな問題になるでしょう。
遺産分割が終わると誰もがホっとして資料は捨ててしまうことが多いので証拠が無くなっているものです。

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