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遺言で全財産の遺贈を受けた人が、被相続人の養子から遺留分行使を受けたときに、

2020年5月28日

最高裁平成31年3月5日判決(判例時報2421号)


被相続人は甥Yと養子縁組しました。その後、被相続人は亡くなりましたが、遺言で全財産をXに包括遺贈していました。Xは被相続人からみると姪(養子となった甥の姉)の夫に当たる人物でした。YはXに対し、遺留分減殺請求訴訟を提起しました。
Xは検察官に対しYの養子縁組の無効確認を裁判で求めました。こういう裁判が許されるかというのがこの事件の争点です。通常の民事裁判で原告や被告が「養子縁組の無効」を主張すること(主張適格)に特段の制限はありませんので可能ですが、ここで問題になったのは、強力な対世効のある「養子縁組の無効の訴え」を提起することができる者(原告適格)の範囲は?というちょっと特殊な法律問題です。


昭和63年3月1日最判


この問題については古い最高裁判例があります。この判例は次の2点を明確にしました。「養子縁組の無効の訴えは、縁組当事者以外の第三者でも提起することができる確認の訴えである。」
「養子縁組が無効であることにより、『自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける』ことのない者は、養子縁組の無効の訴えにつき法律上の利益を有しない。」
そして、「『自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける』というのは、可能なものを含め身分に関する実体法規に定める地位又はこれに関する権利の行使もしくは義務の履行に影響を受けることをもって足りる。」とされています(この判例に関する調査官(最高裁の調査官というのは現役の経験豐富な判事であり家庭裁判所の調査官という専門職とは全く違うものです。)の意見)。

 

高裁の判断(最高裁で否定されます)

 

「養親の相続財産前部の包括遺贈を受けた者は、養親の相続人と同一の権利義務を有し、養子から遺留分減殺請求を受け得ることなどに照らせば、養親の相続に関する法的地位を有するものといえ、養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者に当たる。そうするとXは被相続人の相続財産前部の包括遺贈を受けた者であるから、本件養子縁組の無効の訴えにつき法律上の利益を有する。」
これが高裁の判断でした。これに対して上告がされ最高裁はその上告を認めました。

 

最高裁の判断


最高裁は次のように判断しました。
「養子縁組の無効の訴えは縁組当事者以外の者もこれを提起することができるが、当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのない者は上記訴えにつき法律上の利益を有しないと解される。(注これは昭和63年判例と同じことを言っています)
そして、遺贈は、遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示であるから、養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は、養子から遺留分減殺請求を受けたとしても、当該養子縁組が無効であることにより自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎない。
 したがって、養子縁組の無効の訴えを提起する者は、養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえないと解するのが相当である。」


解説


『身分関係に関する地位』と『財産上の権利義務』とは違うので認められない、ということです。確かに遺留分減殺請求の元である養子縁組(子という相続人の地位)が無効になれば遺留分減殺もできなくなるから、自分の受けた遺贈が減らなくなるという効果はありますが、それは訴えを提起した人の身分関係(親子などの関係のことです)には影響しないのです。
これは、「養子縁組の無効の訴え」という少し特殊な裁判手続に関する最高裁の判断でした。

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