療養看護型の寄与分が認められた例

療養看護型の寄与分について判断された事例をいくつか紹介します。

療養看護型というのは,相続人が被相続人の療養看護を行い,被相続人が看護人に依頼する費用を払うことを免れ,その分相続財産が多く残った,だから寄与分を認めようということです。

寄与分事例集(発行元 財団法人司法協会)に掲載されている少し古い事例であるうえ非常に簡単な要旨だけですので,これと似ているからといって,自分も同じように寄与分が認められるとか認められないと考えることはできません。単なる一つの例というだけです。しかし,こういう例があったという意味で参考になりますので紹介します。

調停の例

調停で寄与分が認められた例1

被相続人(82歳 平成元年に亡くなる)の入院中,付添い看護婦をつけず申立人(三男)の妻が433日間付添い看護をした。この例では調停で付添い看護の一日当たり1万円とみて433万円を寄与分として認定し,申立人が受けていた生前贈与を持ち戻さないことになりました。 この例では,職業的な看護婦に付添い看護を依頼する費用を支出しないで済んだ分を寄与分とするという比較的分かりやすい計算方法となっています。

調停で寄与分が認められた例2

被相続人(54歳女性 平成2年に亡くなる)が持病のぜんそくのために月に2回程度通院したときに,申立人(妹)が通院介助,入院中の付添い看護、その他日常生活における身の回りの世話を約10年間行った。この例では,遺産約5800万円の3.4%(200万円)を寄与分として認めました。

審判の例

審判で寄与分が認められた例1

被相続人(78歳男性 昭和63年に亡くなる)がガンで亡くなるまでの234日間,申立人(長男)らは交代で入院の付添い看護に努めたと主張しました。しかし,裁判所は審判で,被相続人の入院した病院は基準看護を採用しており原則として私的付添いを認めていない。病状不安定で急変が予想されたときは主治医が家族にその旨の病状説明をして私的付添いを認めているのでその期間だけを付添い看護として認めました(約2000万円の遺産のうちの20万円)。

審判で寄与分が認められた例2

被相続人(82歳男性 平成2年に亡くなる)。申立人(二男)は10年間被相続人と同居したが後半の5年間は被相続人が老齢、病弱となり,精神的に異常な面が現れ,一時は夜間徘徊もあり,時折,便・尿の垂れ流しもあったため,療養看護にかなりの労力,神経を費やした。扶養の費用は被相続人から受け取っていた。この例で裁判所は約2900万円の遺産の25%(720万円)を寄与分として認めました。

こういうケースは大変であるけれども金額に算定することが難しいケースです。

まとめ

ここでは紹介していませんが寄与分が認められなかった審判例も多数あります。財産的に寄与した証拠を示すことができないとか,療養看護したとしても他の相続人の看護に比べて特別なものではないとか,親子の間に通常期待される範囲にとどまるから特別の寄与ではないと判断されると寄与分は認められないことになります。

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