寄与分に関するいろいろな問題点

寄与分に関する色々な問題について

代襲相続と寄与分の主張

たとえば,父親が祖父の家業を手伝い特別の寄与をしていたけれども,父親が先に亡くなり,その後に祖父が亡くなった場合の寄与分はどうなるか。この様に,被相続人(この場合の祖父)よりも先に子供(この場合の父親)が亡くなってしまった場合は,その子供の子(被相続人からみると孫)が代襲して相続することができます(代襲相続 民法887条2項)。 代襲相続の場合は,被代襲者(この場合は父親)の相続分を受けるものであるので、もし被代襲者が生きていたら主張できたはずの寄与分も代襲者(この場合は子供の子)は主張することができます。

特別の寄与」とはなにか

相続人の寄与分が認められるためには「特別の寄与」であることが必要です。「特別の寄与」というためには,被相続人(亡くなった方)と相続人の身分関係(親子とか夫婦という関係のこと)に基づいて通常,期待されるような程度を超えた貢献であることが必要です。通常期待される程度の場合は「特別の寄与」にならないのです。 親子や家族はもともとお互いに協力しあって生きているもので,被相続人の財産維持や増加に貢献した家族の行為はいろいろとあるものです。そういういろいろな貢献のうち親子や夫婦といった関係に基づいて通常期待されるような程度の貢献は相続分自体において既に評価されているので(通常の相続分だけで充分だということ),寄与分とは認められないのです。

親子と夫婦で「特別の寄与」が違うこともあります

身分関係(親子関係とか夫婦関係とか)に基づいて通常,期待されるような程度」を超えたかどうかが「特別の寄与」になるかどうかの基準になりますから,身分関係によってその程度が変わることになります。夫婦間の協力扶助義務(752条)は,親子間の扶養義務という直系血族としての一般的な扶養義務(877条)よりも程度が高いと考えられるので,同じことをして同じ貢献をしていても,夫婦間では「特別の寄与」に当たらないけれども,親子間では「特別の寄与」にあたるということもあり得ることになります。

寄与によって被相続人の財産が維持または増加したこと

これは相続人の寄与(行為)によって,被相続人の財産が増加した,被相続人の財産が減少することを防いだ,被相続人の債務(借金)が増えることを防いだ(債務が減少した)ということが必要だという意味です。寄与分というためには,このような財産上の効果(経済的な効果)が発生したことが必要です。精神的に貢献しただけでは寄与になりません。

先行する相続を放棄したことは寄与に当たるか

たとえば父親が亡くなったときに,子供の一人が相続を放棄したため,その分だけ母親の相続分が増えた場合,その後に母親が亡くなったとき,父親の相続のときに相続放棄した子供は寄与分を主張できるかという問題です。 相続放棄の動機には色々なものがあるので,原則として寄与分としては認められにくいです。ただし,相続放棄のときの事情によっては,また先行相続からあまり期間が経過していない場合には寄与として認められる可能性もあります。

療養看護型の寄与分算定方法

寄与分のうち療養看護型の場合は,相続人が被相続人を療養看護したために,もし相続人が看護していなかったならば第三者に支払ったであろう療養看護の費用の支払を免れたのが寄与に当たると考えられます。そこで,第三者への日当の金額×療養看護した日数×裁量割合という計算式で具体的寄与分を導くのが一般的です。

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