生命保険は遺産に含まれるか

被相続人が生命保険をかけていると,被相続人が亡くなったときに保険金が出ます。その保険金は遺産に含まれるでしょうか。この問題は生命保険の受取人指定によって決まります

病気やケガなどのときに出る保険金については契約者自身が受け取ればいいのですが(自分が生きているので),契約者が死亡したときに出る生命保険金は自分でお金をもらうことが出来ないので,保険金を受け取る人を指定することができます(受取人を指定しない場合もあります)。この保険金受取人がどのように指定されていたかで相続のときの扱いが違います。保険の受取人は契約書に書いてあります。

生命保険の受取人が特定の相続人と指定されていた場合

受取人が相続人のうち特定の人に指定されていた場合(たとえば,妻とか子供)には, その保険金は相続財産とはならず,受取人に指定された人の固有の財産となります。 この点は古い判例があります。

大審院昭和11年5月13日判決(カタカナはひらがなに変えてあります)。 「保険契約者が,自己を被保険者兼保険金受取人と定むると同時に,被保険者死亡の時は被保険者の相続人某を保険金受取人たらしむべき旨特にその氏名を表示して契約したる場合には,被保険者死亡と同時にその保険金請求権は右特定相続人の固有財産に属し,その相続財産たる性質を有せざるものとす。」

受取人が相続人と指定されていた場合

受取人を相続人と指定されていた場合については,昭和40年2月2日最高裁判決があります。 この判決は,保険金受取人を「被保険者またはその死亡の場合はその相続人」としていた場合について,特段の事情のないかぎり,右指定は,被保険者死亡の時における,すなわち保険金請求権発生当時の相続人たるべき者個人を受取人として特に指定したいわゆる他人のための保険契約と解するのが相当である。 保険金受取人としてその請求権発生当時の相続人たるべき個人を特に指定した場合には,右請求権は保険契約の効力発生と同時に右相続人の固有財産となり,被保険者の遺産より離脱している。と判示しました。

そして,その場合に相続人が取得する保険金の割合については,平成6年7月18日最高裁判決があります。

「保険契約において、保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合は、特段の事情のない限り、右指定には、相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれているものと解するのが相当である。 けだし、保険金受取人を単に「相続人」と指定する趣旨は、保険事故発生時までに被保険者の相続人となるべき者に変動が生ずる場合にも,保険金受取人の変更手続をすることなく、保険事故発生時において相続人である者を保険金受取人と定めることにあるとともに、右指定には相続人に対してその相続分の割合により保険金を取得させる趣旨も含まれているものと解するのが、保険契約者の通常の意思に合致し、かつ、合理的であると考えられるからである。」

この二つの判例により,受取人を相続人と指定した保険金については,相続財産から外れ,それぞれの相続分により保険金を取得することになります。

受取人が被相続人とされていた場合

この場合は,死亡により発生した保険金請求権という権利が,いったん被相続人に帰属して、それが相続されると考えられます。遺産(相続財産)の一つとなります。

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