相続のときに必要ないろいろな手続

戸籍等の手続

ご家族が亡くなられたときは,次の様な書類や手続が必要になります。

死亡届,死体火葬許可申請書の提出

病院等で亡くなると死亡届と死亡診断書が一枚の紙に印刷されたものが交付されます。それを区役所等の戸籍課に提出します。そうすると火葬許可証を渡され,火葬を終えると埋葬許可証を渡されます。埋葬許可証は墓地や寺院に提出します。

世帯主変更届

世帯主が死亡し,15歳以上の人が二人以上いる場合は世帯主変更届を出します。

相続人の調査(戸籍謄本,除斥謄本,戸籍の付票など) 遺産である不動産の移転登記や預貯金の払戻手続のために相続人の調査が必要になることが多いです。通常は亡くなった方の最後の戸籍から,その方の子供時代まで戸籍を遡って調べます。

相続財産,不動産全部事項証明書,預金などの調査

被相続人の財産(遺産)を調べるためにもいろいろな手続が必要です。

不動産がある場合は,不動産全部事項証明書(昔は登記簿の原本を写したものだったので「登記簿謄本」と呼んでいたものですが,コンピューター化されて謄本ではなくなったので変わりました。)を法務局でとります。それを見れば,所有権を誰が持っているかなどが分かります。

預貯金,株式,有価証券等の金融資産は,預金通帳やキャッシュカード,銀行や証券会社から送られた手紙や資料などを手がかりにして探します。被相続人が使用していた机,棚,仏壇,タンスの奥,銀行の貸し金庫など。

借金(債務)の調査

被相続人が借金を隠している場合もあります。遺品の中に借用証や金融会社からの請求書や督促状がないか調べます。ただし借金が見つかっても,安易に払わない方がいい場合もあります。長期間経過して既に消滅時効にかかっている場合もありますが,うっかり払うと債務を認めたことになってしまうこともあります。

遺産分割協議書の作成

相続人の間で遺産の分割方法(相続)について合意できたときは,それを遺産分割協議書という書面として完成させます。内容が複雑なときは専門家に相談しましょう。

相続登記手続,預金の解約

遺産分割が決まったら,実際に遺産をそれぞれの相続人に分けることになります。遺産のうち預貯金は解約手続をして,相続する人がその金を受け取ればいいのです。ただし,亡くなられた方の預金を相続人が引き出そうとすると,亡くなられたことを銀行が知っている場合には,相続人全員が署名捺印した書類と印鑑証明や相続人であることを証明する戸籍謄本・除籍謄本などを要求されるのが普通なので手続は少し面倒です。

不動産の場合は相続を理由とする移転登記手続をします。登記手続は司法書士が専門です。

戸籍謄本・除斥謄本等が必要な理由

遺言が無い場合は,全相続人で遺産分割協議をして,それを基にして銀行預金を解約したり,登記手続をすることになります。この「全相続人」の範囲を明らかにするために,被相続人が未成年のうちから亡くなるまでの間における連続した戸籍謄本・除斥謄本を揃えることが必要になるのです。少なくとも子供を作ることが可能である年齢から,亡くなるまでの期間の戸籍一式を揃える必要があります。 最後の戸籍から段々と古い戸籍に遡っていくのですが,そのためには戸籍謄本に書かれている情報を読み取る必要があります。古い戸籍の古い手書きの文字を読み取るのは大変です。

また,後に,再び同じ戸籍(除斥)謄本が必要になることがありますので,原本を提出してしまう前に必ずコピーを残しておきましょう。コピーがあれば,それと同じものを発行してもらえばいいので役所の事務手続が円滑になります。

弁護士の仕事では,戦前の戸籍まで調査することは普通にありますし,場合によっては明治時代の初期にまで遡ることもあります。そのころの戸籍に載っている方は江戸時代の生まれです。関東大震災や空襲(東京大空襲や横浜大空襲など)のために戸籍簿が失われ,それ以上は調査不能となる場合もあります。首都圏で古い戸籍を追っていくと,関東大震災と太平洋戦争の空襲が,戸籍簿の無くなる二つの大きな原因であることが分かります。

相続人がいない場合

親戚が亡くなり,その両親も子供も兄弟もいないという場合があります。最近は少子化が進んでいるのでこういうケースが増えるかもしれません。 相続人がいるかどうか明らかでない場合は,相続財産管理人が選任されます(952条)。そして,相続財産管理人が,相続財産を調査し清算します。 その手続のときに,「被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者,その他被相続人と特別の縁故があった者」が家庭裁判所に請求すると,一定の財産を与えられることがあります。これは結構,可能性があるものです。それでも残った財産は,最終的には国庫に帰属することになります(959条)。

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