遺留分,代位行使,内容証明郵便

遺留分減殺請求権を債権者が代位行使できるか

債権者代位権といって債権者は自分の債権を保全するために債務者の権利を代わりに行使できる場合があります。では,債権者は債務者の遺留分減殺請求権を代位行使できるでしょうか。

最高裁平成13年11月22日判決

最高裁は,遺留分減殺請求権は行使するときには一身専属性のある権利であるという理由でこれを否定しました。 最高裁平成13年11月22日は次のように言っています。 「遺留分制度は,被相続人の財産処分の自由と身分関係を背景とした相続人の諸利益との調整を図るものである。民法は被相続人の財産処分の自由を尊重して,遺留分を侵害する遺言について,いったんその意思どおりの効果を生じさせるものとした上,これを覆して侵害された遺留分を回復するかどうかを,もっぱら遺留分権利者の自主的決定にゆだねたものということができる。 そうすると,遺留分減殺請求権は,前記特段の事情がある場合を除き,行使上の一身専属性を有すると解するのが相当であり,民法第423条1項但書にいう『債務者の一身に専属する権利』にあたるというべき」と判断しました。 したがって,債務者の親が資産家であって最近相続があり,債務者は遺留分行使が可能であったとしても,債務者の遺留分を代わって債権者が行使することはできません。

遺留分減殺をする方法

1 内容証明郵便で減殺請求をする

遺留分減殺の方法に特別の決まった方法はないのですが,後々,減殺請求をしたかしなかったかの紛争になることを防ぐために証拠を残すことが必要です。そこで,遺留分減殺の意思表示をしたことを証拠に残すために,内容証明郵便,配達証明付きを利用した方がいいでしょう。また遺留分減殺の意思表示には一年間という期間制限があるので注意が必要です。

内容証明郵便の出し方

内容証明郵便を出すときには,全く同一の手紙を3通準備して(普通はコピーして作ります)大きな郵便局に持っていかなければいけません。3通のうち,1通は相手に配達され,1通は出した人が保管し,もう1通は郵便局で保管さます。差出人の手元に残るこの手紙の写し(謄本)によって,誰が,いつ,どういう内容の手紙を出したかを証明することができるようになります。

大きな郵便局へ行く

内容証明郵便はどこの郵便局でも出せるものではありません。集配郵便局など大きな郵便局だけです。 内容証明郵便を出すために必要なもの 相手に出す手紙を3通。ただし,内容証明郵便には書式が決まっています。文房具屋に売っている市販の用紙に手書きで書いてコピーしたものでも,パソコンで書いてプリンターで印刷したものでもかまいませんが,とにかく書式は守る必要があります。

内容照明郵便の書式

縦書きで書く場合は,1行20字以内,1枚26行以内。横書きで書く場合は,1行20字以内・1枚26行以内,または,1行13字以内・1枚40行以内,または,1行26字以内・1枚20行以内などと決まっています。句読点も1文字ですし契印も必要なので注意が必要です。ネットで検索してから書きましょう。

その他に,差出人や受取人を書いてある封筒1つ。訂正が必要なときに使いますので印鑑も持参した方がいいでしょう。 書留になるので,配達証明も付けると,手紙の枚数にもよりますが郵便料金は最低1,500円位になるのが普通です。遺留分減殺の意思表示は重要なことなので多少費用かかかっても内容証明とすることを勧めます。

2 交渉による解決

相続人どうしの話合いで解決できればそれに越したことはありません。弁護士が依頼を受けた場合もできるだけ交渉から始めます。相続のときは被相続人の世話や介護などのことで色々な不満が出てくるものですが,交渉では言いすぎないように注意しましょう。相続人間の人間関係がここで壊されてしまうと,後で弁護士に依頼したときも解決が難しくなることがあります。

3 家庭裁判所での調停申立

遺留分の事件は家庭に関する事件として家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停を申し立てることのできる裁判所の管轄は,原則として相手方の住所地の家庭裁判所です(合意管轄も認められます)。 調停が不調で終了したときは,今度は家庭裁判所ではなく地方裁判所で通常の民事訴訟を起こすことになります。夫婦の離婚事件とは少し違う進行になります。

4 民事訴訟提起

遺留分減殺に関する紛争は本質が訴訟事項とさているので,当事者間の協議でまとまらないし,調停でもまとまりそうにないときは,最初から民事訴訟にすることもできます。

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